トレーサビリティ
1.なぜ校正が必要か
製造業者、試験研究機関その他産業界、一般社会等における計測値の信頼性を確保するために校正が必要です。例えば温度計測の場合、食品の殺菌温度、医薬品の合成・保管温度、製鉄所における溶鋼温度、プラントにおける化学反応温度、発電所における冷却水壁管温度、自動車、航空機部品熱処理温度等について、計測値の信頼性が確保されていないと大事故が発生する可能性があり、製造業者等の信用を失墜するだけでなく、社会的影響も大きい。このように、計測器の校正は必要不可欠です。
また、各産業界に関連する法律 規格、品質マネジメントシステムにおいても計測器の校正(または点検)は必須要求事項となっています。
| IATF 16949 自動車生産および関連サービス部品組織のISO9001:2000適用に関する固有要求事項計測器の校正に関わる要求事項に加え、外部校正機関のISO/IEC17025への適合を要求しています。 |
| AMS 2750
米国規格で航空・宇宙産業で使用される熱処理炉の運用、管理について規定。熱電対、計測器の仕様と校正について詳細に規定しています。
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| 高圧ガス保安法
製造設備で高圧ガス保安法により規制されている設備に使用されている温度計は2年ごとの点検が義務付けられています。 |
| 薬事法 GMP
医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理規則 (GMP)のバリデーションにおける計測器校正について規定しています。 |
| HACCP
HACCPでは温度は重要管理項目(CCP)で、モニタリング機器の校正はその妥当性検証に必須です。 |
| ISO14000
監視および測定機器は校正されたものを使用することと規定されています。 |
| ISO9000
監視機器および測定機器の管理は国際または国家計量標準にトレース可能な計量標準に照らして校正または検証することが要求されています。 |
2.校正とトレーサビリティの意味
JIS Z 8103:2000計測用語では次のように規定されています。
【校正】
計器または測定系の示す値、若しくは実量器または標準物質表す値と標準によって実現される値との関係を確定する一連の作業。
備考校正には計器を調整して誤差を修正することは含まない。
【トレーサビリティ】
不確かさ注1がすべて表記された、切れ目の無い比較の連鎖によって、決められた基準に結びつけられ得る測定結果または標準の値の性質。基準は通常国家標準または国際標準である。
注1)不確かさは測定値のばらつきの大きさを意味しますが、ばらつきには実際の測定上の測定データの変化に加え、使用する物理定数のあいまいさなどの知識のあいまいさも含みます。
3.JCSSについて
JCSS(Japan Calibration Service System)の正式名称は「計量法校正事業者登録制度」で平成5年11月に改正された計量法により導入されました。
その仕組みは下図に示すとおり、国立研究開発法人 産業技術総合研究所による標準供給と独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センターによる「登録事業者」の審査登録です。
JCSSの対象となる校正の源の国家計量標準(一次標準:特定標準器等または特定標準物質)は、計量法に従い、産業界のニーズや計量標準供給体制の整備状況に基き経済産業大臣が指定しています。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所、日本電気計器検定所または経済産業大臣が指定した指定校正機関は、指定された特定標準器または特定標準物質を用い、登録業者に対し計量標準の供給(校正等)を行います。
「登録事業者」の審査登録は校正事業者がISO/IEC17025の要求事項に基いて校正を実施する技術能力をもっていることを独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センターに製品評価技術基盤機構理事長名で登録します。
4.JCSSのメリット
JCSS校正は第三者である審査登録機関が事業者の技術能力や品質システムの信頼性をも保証し、登録事業者の発行するJCSS標章付き校正証明書は、我が国の国家計量標準にトレーサブルであることを証明するものです。 従ってトレーサビリティ証明書など他の文書は不要です。
またMRA対応認定事業者の発行する証明書は海外でも受け入れられます。
JCSS認定機関のIA Japanは国際的な試験所機構であるILACとAPLACにおけるMRA(相互承認取決)に署名していますので、MRA対応認定事業者が発行する校正証明書は世界の主な国での受け入れが可能となっています。