用語集(熱画像)

  • サーモグラフィ・カメラ
    熱分布をとらえて2次元画像に表す装置。2次元画像を構成するのに大別して単(少数)素子で可動式(回転あるいは振動)ミラーを用いて走査(スキャン)する方式と撮像素子(FPA:フォーカルプレーン・アレイ(デジカメもこれ)で電子走査する方式があります。21世紀に入ってからはFPAが主流です。赤外線のエネルギーをとらえて温度に換算しています。
  • 赤外線
    光は波の性質を持っており電磁波とも呼ばれます。波の1周期の長さを波長と呼びます。ヒトの肉眼で見える可視光(およそ0.35~0.75μm(1000μm=1㎜))の紫より波長が短いのが紫外線、赤より波長が長いのが赤外線です。波長領域(波長帯)によって近赤外(およそ0.7~2.5μm)、中赤外(およそ2.5~5μm)、遠赤外(およそ5~1000μm)に区分されています。サーモグラフィ・カメラとしては一般的に、近赤外(およそ0.7~5μm)、短波長(およそ3~5μm)、長波長(およそ7~14μm)と呼び分けています。
  • 素子数・画素数(横×縦)
    素子 (画素)とは画像の最小単位のことで、ピクセルとも呼ばれています。 素子数とは撮像素子に並んだ素子の数のことを言います。素子数が多ければ多いほど、解像度の高い鮮明な画像が撮れます。
  • 測定波長
    測定する波長域のことを言います。赤外線サーモグラフィでは物体から出ている赤外線エネルギーを測定して温度に換算します。物体から出ている赤外線の波長領域は原理的に温度により異なる為、高温域測定には短波長、低温域測定には長波長が適しています。 また、その測定波長に含まれるレーザー光などを見てしまうと直接・間接(反射)を問わず素子の破損の恐れがあります。たとえば長波長帯(8~14μm)のカメラの場合CO2レーザー(10.6μm)は大敵です。
  • 視野角(FOV)
    測定する視野の範囲のことを言います。 水平・垂直の角度で表します。 おおむね赤外線サーモグラフィでは広角レンズが一般的なカメラ(35㎜フィルムカメラ)の標準レンズ相当になります。
  • 空間分解能(IFOV)(瞬時視野角)
    1素子が見ているサイズを表します。
    1素子が見ている角度で表し、単位は“mrad(ミリラジアン)”となります。
     (弧度法:1π(rad)=180°、読み方:rad=radian:ラジアン)
     この数値に測定距離(m)を掛けると、近似的にその距離での1素子の測定サイズ(mm)となります。(実際にはボケがありますのでその3*3倍以上のサイズを測定することをお薦めしています)
  • 温度分解能
    測定器(赤外線サーモグラフィ)が認識できる最小の温度差です。
    この値が小さいほど、赤外線サーモグラフィによる温度測定の分解能が優れていることになります。雑音等価温度差(NETD)で表すことが一般的ですが、メーカーによって算出方法が異なるためメーカー間では比較になりません。
  • 精度定格(温度精度)
    標準の温度計(校正システム)に対する測定値のずれのことを言い、この値が小さいほど性能が優れています。
    精度については、黒体炉に対してのみ謳っており、実際の測定対象物に対して保証するものではありません。
  • フレームレート(フレームタイム)
    1秒間のうちに何回画面を更新しているかを表しており、画面更新周期とも言います。
    数値が大きい方が早い変化に対応できます。マイクロボロメータ素子の温度追従能力は30Hzくらいが限界とされています。
  • フォーカス
    焦点(ピント)を合わせることを言います。
    フォーカスの方法には、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの2種類があります。この焦点がズレていると正確な測定が出来ません。
  • 最小測定距離(最短結像距離)
    カメラの焦点が合う最小(最短)距離のことを言います。
    より近くに寄ることが出来れば対象物もより大きく表示され、より小さな分解能で測定することが可能になります。
  • ナルシサス現象
    測定対象物に素子自身が反射して映ってしまう現象をいいます。電子回路基板測定など近距離で放射率が低いものに正対する場合に目立ってきます。距離をあけて角度をつけて素子の反射が正面に来ないようにするなどして避けることができます。
  • ビューファインダ
    カメラで撮影する像を目視確認する為に設けられた覗き窓のことを言います。
    撮影前に構図を決めたり、ピントを合わせたりするのに使用します。
    屋外撮影時に液晶では見えにくい場合に多く使用されます。
  • 温度レンジ
    カメラが測定できる温度範囲。測定値(測定したいところ)が温度レンジ内であれば画像が表示温度範囲(カラーバーのMax~Minの範囲)に入っていなくても温度データは保存されていますので、解析時に表示温度範囲を変更することで再表示が可能になります。ただし、画面上で表示温度範囲を外れている場合、その部分はマニュアルではピント合わせができないので注意が必要です。
  • 温度スケール
    画面に(カラーバーで)表示されている温度範囲の目盛(上下限値とカラーバーのみで途中目盛りは表示しないことが多い)。カメラ本体や、パソコンでも変更が可能。測定したい個所に合わせて表示温度範囲を調整することで、微少な温度ムラなどが表示できます。(見るべき温度範囲に「焦点」を合わせるという意味で「サーマル・フォーカス」とも呼ばれます)
  • カラーパレット
    色情報、ディスプレイに表示させる色の組み合わせのことを言います。後からでも変更は可能で、一般的にはレインボー/アイアン/グレーなどが多く使用され、レインボーカラーは温度分布を、アイアンはホットスポットを、グレーは熱勾配を分かりやすく表示することが出来ます。またレインボーでは赤・黄・青の表現が使えるので、設備診断報告など発熱して危険な個所を赤、温度が高めの要注意箇所を黄、正常部を緑~青で表現すると分かりやすくなります。
  • アイソサーモ機能(色アラーム) 
    注目したい温度域を特別に色分けすることを言います。
    判定基準値より高い温度の領域を赤く表示するなど、空港などの検疫所ではスクリーニングとして、設備診断では特定温度以上の箇所を一目で発見するなど、温度値をいちいち見るのではなく色で瞬時に判断でき便利です。
  • パラメータ
    カメラ撮影時の基本情報。放射率・反射源温度・測定距離・外部光学系温度・外部光学系透過率等があります。キルヒホッフの法則に基づいて測定精度に影響を与えるパラメータを補正できるようになっています。測定後もソフトウェアで変更可能です。ただし経路途中の窓材の透過率の補正はできますが、測定対象物自体に透過性がある場合、その透過率は補正できません。補正アルゴリズムは対象物の透過率=0を前提としております。
  • キルヒホッフの法則
    測定対象表面から放射されるエネルギーと、手前にある物体から放射され測定面で反射されるエネルギー、そして測定面の向こう側にある物体から放射され測定面で透過されるエネルギー、この3つのエネルギーの成分の比率が放射率、反射率、透過率となり、放射率+反射率+透過率=1となっています。
  • 放射率(Emissivity)
    理想の放射体である黒体の赤外線放射エネルギーを1とし、実在の物体からの熱放射(赤外線エネルギー)を0~1で表し放射率と言います。
    同一物質でも表面が粗いときには放射率は高くなり、より放射エネルギーが強く精度良く測定することが可能となります。放射率が低い場合は、放射エネルギーが少なく逆に反射のエネルギーが多くなるため、測定は難しくなります。
  • 反射率
    物体の放射率が1でない場合、反射されるエネルギーの割合。
    反射した赤外線エネルギーと物体に入射したエネルギーの比を反射率と言います。
    透過しない物体を前提とし、1-放射率=反射率。
  • 反射源温度
    物体で反射される、手前にある物体(壁など)の見かけの温度(放射率1で測定できる温度)
  • 透過率
    物体によって測定波長を透過する測定対象があり、その場合は物体の放射率+反射率+透過率のエネルギーがカメラに入ることになり、測定は非常に難しくなります。これが補正できるアルゴリズムにはなっておりません。樹脂フィルムや特殊なガラス材料などが透過します。
  • 外部光学系透過率
    経路途中に窓材がある場合、窓により測定対象物からの放射は吸収され減衰し、窓からの放射が上乗せされます。窓材の透過率・温度がわかれば、外部光学系温度を設定しその放射とともに窓材による吸収(1-外部光学系透過率)を補正できます。
  • MSX(フリアーシステムズの特許機能)
    可視像から抽出した輪郭部分をリアルタイムで熱画像に重ね合わせることで対象物がより判別しやすい画像に表示する技術。ソフトウェアで表示/非表示の設定が可能です。
  • ピクチャーインピクチャー
    熱画像データの表示方法の一種。可視画像の中に一部のエリアのみ赤外線画像を表示させる表示方法。ソフトウェアで表示/非表示の設定が可能です。
  • UltlaMax
    カメラの保存機能で静止画でのみ有効。画像処理により通常画素数の約4倍相当の画質を実現する機能です。
  • 黒体(炉)
    放射率1の理想の放射体です。放射率を1に近づけ基準熱源とできるようにしたものが黒体炉。キャビティ(空洞)形と平面形(面黒体)があります。

データ拡張子

  • JPG(JPEG)
    カメラ、ソフトウェアで保存した静止画ファイル。 FLIR社製のカメラの場合、赤外線熱画像ファイルには各素子の熱データによる画像とカメラ内蔵デジカメによる可視画像データが含まれており、ソフトウェア等で解析・調整が可能です。
  • SEQ
    研究用ソフトウェア上で記録した熱画像による動画ファイルです。解析・調整が可能です。
  • CSQ(Camera Sequence)
    カメラ本体で録画する場合の熱画像による動画ファイルです。解析・調整が可能です。SEQに比べて圧縮しているためデータサイズが小さくなります。
  • MP4(MPEG4)
    カメラ本体で録画する場合のビデオ画像(データなし)による動画ファイルです。画面に表示された通りのイメージ動画となります。解析・調整はできません。

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