サイリスタレギュレータ

サイリスタレギュレータとは?

「サイリスタレギュレータ」は”操作部”の1つで交流電源をオンオフする電気的スイッチです。調節計など”制御部”からの信号を受け、電力の制御をすることにより、電気炉の 温度を制御します。機械的スイッチと比較して、高速スイッチングできるため精密な温度制御が可能、動作時の音が小さい、接点がないため長寿命等の特長があり、産業界の温度制御分野で広く使用されています。

サイリスタレギュレータの構成

サイリスタはアノードとカソード、ゲートの3つの部分から構成されています。ゲートに電流を流すとオンになり、電流がゼロになるとオフする性質があります。
この性質を利用し、ゲートに電流を流すタイミングを変化させることによって交流電力を制御します。
交流回路には正負双方向の電流が流れますが、サイリスタは一方向しか電流を流すことができないため、単相の場合は2個のサイリスタを逆向きに並列接続した構成としています。

三相の場合、基本的には単相サイリスタレギュレータ×3つの6アーム(ゲート=アームが6個)となりますが、もう1つ3アーム(ゲート=アームが3個)の2種類があります。6アームは3アームと比較して制御性やトランス負荷とのマッチング、流出高調派電流の低減などのメリットがあるため、チノーでは6アームを標準仕様としています。

サイリスタレギュレータの種類

• 位相制御方式

位相制御方式は、サイリスタ(シリコン制御整流素子)のゲート端子に電流が流れONになる時間(位相)を変化させることにより負荷への供給電力を制御する…、つまり負荷への電力供給時間を変える方式です。

• 分周制御方式

分周制御方式は、一定周期内で通電時間(ON-OFF時間)の比を制御する方法です。分周制御方式は位相制御方式と違い、電源電圧のゼロクロス点近辺でサイリスタのスイッチング(ON-OFF)をおこなうので、ゼロクロススイッチングと呼ばれ、位相制御方式に比べ、スイッチング時に発生するノイズが非常に小さいことが特長です。
オンするとヒータには必ず電源電圧が印加されるため、温度によって抵抗値が大きく変化するヒータでは、冷間時に大電流が流れるため使用に適していません。ニクロムや鉄・クロム系などの抵抗温度係数の小さなヒータの温度制御に適しています。

フィードバック方式

“位相制御方式”は、発熱体材質の温度による電気抵抗の変化により、さらに、電圧フィードバック形、電力フィードバック形、電流フィードバック形の3種類に分けられます。

• 電圧フィードバック形

電気抵抗の変化が小さい発熱体の鉄-クロム、ニッケル-クロムなど場合は、電圧フィードバック形を使用します。
常用温度:約600℃~1000℃

• 電流フィードバック形

低温時に電気抵抗が極端に小さく、加熱時に電気抵抗が6~12倍に変化する発熱体の白金やモリブデンなどの場合は、電流フィードバック形を使用します。
常用温度:約1200℃~1600℃

• 電力フィードバック形

炭化珪素(SiC)など、発熱温度によってその抵抗が変化し、更に経年変化により、電気抵抗が初期の4倍近くまで劣化する様な発熱体の場合は、電力フィードバック形を使用します。
常用温度:約1500℃~1800℃

機種の選定

  1. ヒータの温度と抵抗値の関係を調べ、位相/分周、フィードバック方式を決定します。トランス負荷の場合は位相制御方式とし、フィードバック方式はヒータの抵抗温度係数から決定します。
  2. ヒータ電流を計算します。
    単相:ヒータ電流=ヒータの定格電力/電源電圧
    三相:ヒータ電流=ヒータの定格電力/電源電圧/√3
  3. ヒータの製作誤差や電源電圧変動を考慮し、ヒータ種類とフィードバックの有無により、サイリスタの電流容量に余裕を持たせます。
    ニクロム系: フィードバックあり・・・計算値の110%以上
    フィードバックなし・・・計算値の120%以上
    純金属系: 計算値の120%以上
    炭化珪素系: 計算値の120%以上
    トランス負荷: 計算値の130%以上
  4. 以上の結果から、サイリスタの電流容量に近い大きめのサイリスタを選定します。

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