温度は物質を構成する原子・分子の運動速度を示しており、また、熱を放出する能力を表しています。一般的には摂氏温度(°C)という単位を使用していますが、熱エネルギーを考えるときには絶対温度(K:ケルビン)を使用します。絶対零度OK=-273.15°C(273.15K=0°C)、温度の単位δT=1°C=1Kです。全ての絶対零度以上の物体からは、放射エネルギーという形で熱を放出しています。その放射エネルギーを測定して温度換算することで温度を測定することが出来ます(プランクの熱放射則)。
この熱放射は電磁波(光)であり、通常測定する温度領域が赤外線を主に放射する領域であることから、赤外線放射温度計と呼んでいます。
放射温度計はスポット(点)測定、ライン(1次元走査型)測定、イメージ(2次元)測定に大別されます。
各放射温度計の特長
- スポット放射温度計・・・主に生産ラインで使用され温度精度・再現性を重要視する計測に
- 走査型放射温度計・・・主に生産ラインの移動物体や回転物体など幅方向の温度パターン計測に
- サーモグラフィカメラ・・・設備診断/建築診断/研究用途など様々な用途があります
サーモグラフィカメラのメリット
- 非接触で離れた場所から安全に測定可能
- 非接触なので対象物への影響がない
- 画像でリアルタイムに測定が可能
- -20~2000℃(カメラによる)まで対応可能で、温度分解能・空間分解能も高い
サーモグラフィカメラの弱点
- 物体の表面からの放射エネルギーを測定しているため内部の温度は測定不可
- 目視では見えていても赤外線の波長では透過していないので、ガラス・アクリル越しでの測定は不可(透過できる窓材はあります)。
- 測定対象面からカメラに入射するエネルギーには放射/反射/透過のエネルギーがあり、すべての物体で精度良く測定できるわけではない(放射率問題)。
測定上の注意 (放射率)
理論通り測定できる物質の表面状態は放射率1であり、通常対象とする物質は1ではありません(0<放射率<1)。サーモグラフィで精度良く測定するためには放射率等カメラの設定が必要となります(放射率は0.01~1の範囲で設定が可能(機種によります))。
測定対象面からカメラに入射するエネルギーには放射/反射/透過のエネルギーがあり(キルヒホッフの法則)、放射率とともにこれらの補正を行い測定精度を向上させます。ただし補正結果が温度レンジを超える場合は測定結果が得られません。
放射率の違い
表面はアルミ板の簡易的なヒーター(約50℃)で右側には黒色の塗料を塗布
放射率の高い右側では51.8℃と精度良く測定できているが
鏡面の左側だと26.5℃と室温に近い値しか表示していない
反射の影響(反射しているものにピントを合わせてみる)
きれいにカメラ自身が映っている=超低放射率=補正困難
ここでは放射率<0.1となっており、すなわち残りの0.9(90%)以上は反射源を測定していることとなり、測定の意味がないと言えます。一般的には対象物の放射率>0.7の測定が推奨されております。酸化していない金属表面は放射率が低く、非金属は放射率が高い傾向にあります。