チノーグループでは、気候変動をサステナビリティ経営上の最重要課題の一つと認識し、SDGsやパリ協定の長期目標に示された脱炭素社会への貢献に向け、幅広いステークホルダーとの協働を通して、気候変動に係るリスクへの適切な対応と成長機会の獲得に取り組んでおります。
2022年5月に当社グループは気候変動関連情報開示の重要性を踏まえてTCFD提言への賛同を表明しました。同年に開示したシナリオ分析では、2℃以下シナリオを基に、気候変動に関連した重要なリスク・機会を抽出して定性的に分析し、それらに対する対策の検討と目標の設定を行いました。
翌年以降は、気候変動がもたらす当社事業へのリスクと機会についての分析と対応、およびTCFD提言に沿った情報開示の拡充と更新を定期的に行っています。
今回(2024年6月)の更新につきましては、2℃以下シナリオに加え、4℃シナリオを含む複数のシナリオを用いて、定性及び定量の両面から、気候変動に関連するリスク・機会による財務影響度と対策を改めて分析し、分析の対象期間も2030年と2050年に拡充しました。
当社グループでは、2022年1月に「気候変動への対応」を含むグループ全体のサステナビリティ経営に関わる基本方針や重要施策等を検討・審議する組織として、代表取締役社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置しました。
「サステナビリティ推進会議」は毎年一定のサイクルで定期的に開催しています。気候変動を含むサステナビリティ課題に関する方針の策定、マテリアリティの特定や、対応の方向性の議論、GHG排出削減目標を含むKPIの設定及び取り組み状況のモニタリングを行っています。審議・決定された内容を、適宜取締役会に報告しながら、「脱炭素化プロジェクト」、「CSR 推進プロジェクト」と「サステナビリティ企画室」を通じて経営層及び本社・各事業部門、グループ会社にも共有しています。
また、経営戦略と人財・組織戦略が緊密に連動した人的資本経営を推進するため、2022年10月に社長を委員長とし執行役員が委員を務める「人財・組織開発委員会」を設置しました。委員会では、人財マネジメントシステムの全体像を俯瞰した上で、人財育成や従業員のエンゲージメント向上策の方針決定、具体施策の検討及び進捗状況の確認を行い、企業価値の向上に資する人事戦略を推進しております。 取締役会は、「サステナビリティ推進会議」及び「人財・組織開発委員会」で審議された内容の報告を受け、活動の基本方針及び重要施策等についての審議・監督を行っております。
会議/組織(開催頻度) | 役割 | 活動実績 |
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取締役会 (年14回) |
「サステナビリティ推進会議」で審議された内容の報告を受け、活動の基本方針及び重要施策等についての審議・監督を行っている。 | 2023年4月に、サステナビリティ推進会議の活動状況およびマテリアリティごとのKPIを確認 |
サステナビリティ推進会議 (毎年定期的に開催) |
代表取締役社長を議長として2022年1月に設置。 「気候変動への対応」を含むグループ全体のサステナビリティ活動に関する方針の策定や取り組みのモニタリングを行っている。 当推進会議での決議事項及び検討事項は適宜取締役会にも報告している。 |
・2023年4月に、マテリアリティごとのKPIを設定 ・2023年11月に、Scope1,2削減の具体策および全社サステナビリティ活動の方向性を決定 |
脱炭素化プロジェクト (-) |
脱炭素市場に対するマーケティングと関連するさまざまな課題解決に向けた新製品・サービスを提供するため、2021年2月に設置。 当社グループの技術を通じてサステナブルな社会の実現に貢献することにより、自らの社会的責任と持続的成長を果たしていく。 |
・水素、センサ、モニタリングの分野ごとに製品、システムの提案を実施 |
CSR推進プロジェクト (-) |
全従業員のサステナビリティ意識向上と活動を加速させるため、2021年5月に設置。 全社横断型の組織として、各部門から集められた約20名のメンバーで構成され、拠点・部門ごとにCSR活動や啓発活動を行うとともに、気候変動対応を含むサステナビリティ課題(マテリアリティ)のアップデートや具体指標の設定に関する原案策定の討議を行っている。 |
・2023年度はサステナビリティの「自分事化」をテーマに活動し、2023年8月には各部門の業務とサステナビリティを紐づける全社活動を企画し、実施 |
サステナビリティ企画室 (-) |
サステナビリティ経営の推進に向け、今後さらなる全社的な取り組みを推進するため、2023年4月1日付で経営管理本部内に設置。 「サステナビリティ推進会議」で審議された内容を本社、各事業部門及び各グループ会社へ共有し、取り組みの進捗をモニタリングしている。また、取り組みの進捗状況に加え、各事業部門等から抽出された気候関連課題や実施中の課題を適宜「サステナビリティ推進会議」に報告している。 |
・2023年度、シナリオ分析を実施、気候変動による事業インパクトを算出 ・2023年度、Scope1,2の算定を実施 |
当社グループは、気候変動に伴うリスク及び機会を事業戦略上の重要な要素の一つと認識し、2022年にTCFD 提言に沿って定性的な分析を開始しました。2023年には、気候変動がもたらす事業へのリスクと機会及びそれらの財務影響度についての分析と対応を一層強化するために、詳細なシナリオ分析を実施しました。
また、シナリオ分析実施時には環境省が発行した「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ(2023年3月発行)」を参考に、下記手順に沿って定性・定量の両面から考察を行っています。
上記シナリオ分析を通じて、気候変動に関連するリスク・機会が当社グループの事業に及ぼす財務影響度を大・中・小の三段階に分けて評価したうえで、当社グループのサステナビリティ経営に関連する基本方針や戦略等を鑑み、重要であると判断した事項について記載しています。
2℃以下の「脱炭素シナリオ」においては、カーボンプライシング(炭素税)の導入及び原材料価格上昇による製造コストの増加、省エネ効率の高い空調、製造設備への更新による操業コストの増加などを重要な移行リスクとして特定しました。4℃の「温暖化進行シナリオ」においては、物理的リスクとして異常気象の激甚化による自社拠点を含むサプライチェーンの操業停止・停滞がとりわけ事業活動へ大きなインパクトを及ぼすことを想定しています。
一方、脱炭素社会への動き、とりわけ水素利活用の進展とモビリティの電動化および再生可能エネルギーの需要拡大や低炭素技術の進展によるEVへのシフト、電力などのエネルギーの使用状況の監視に対する需要拡大等が、当社グループの技術を活かした課題解決・販売拡大の機会であるととらえています。また、平均気温が上昇した場合、異常気象の予測や環境の変化に伴う高精度の温度管理などに対する需要の拡大も、温度計測を中心とする当社グループの事業に対しての重要な成長機会であると想定しています。
大分類 | 中分類 | 小分類 | 考案 | 時間軸 | 財務インパクト | ||
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2℃以下 シナリオ |
4℃シナリオ | 試算 | |||||
リスク | 移行 | カーボンプライシングの導入 | カーボンプライシング導入により自社温室効果ガス排出量に応じて、操業コストが増加 | 短期〜長期 | 中 | - | ○ |
エネルギー使用に関する政策規制 | ・再エネ・省エネ政策の強化により、再エネ電力への転換や、生産拠点における太陽光パネルの設置 ・更新、または省エネ効率の高い設備の導入に関する対応コストが発生 ・自社製品または調達している部品を省エネ化へ転換することに伴う研究開発費用や調達コストが増加 |
中期〜長期 | 大 | - | - | ||
エネルギーコストの変化 | 脱炭素化が進むことにより、再生可能エネルギーの需要が増加、発電所における設備投資等のコスト が電力価格に転嫁され、操業コストが増加 | 中期〜長期 | 中 | - | ○ | ||
原材料コストの変化 | 炭素税の導入などによる金属・プラスチックなどの原材料の原価上昇や、環境配慮型原材料・資材へ の切り替えに伴い、自社の原材料購入価格と製造コストが上昇 | 中期〜長期 | 大 | - | - | ||
レピュテーション変化による影響 | 気候変動への対応が不十分な場合、顧客や投資家からの評判が悪化し、売上減少や資金調達難が発生 | 短期~長期 | 中 | - | - | ||
物理 | 異常気象の頻度(台風、豪雨、土砂災害、高潮等) | 異常気象の激甚化による自社拠点の被害やサプライチェーンの寸断による調達コストの増加または営業停止の損失が発生 | 短期〜長期 | 大 | 大 | - | |
干ばつ | 干ばつの影響により、製造において水を大量に使用する半導体の生産量が低下し、自社の生産活動 で使う半導体の調達困難や自社の半導体産業に関連する温度計測機器などの製品の需要減少が発生 | 短期〜長期 | 中 | 中 | - |
大分類 | 中分類 | 小分類 | 考案 | 時間軸 | 財務インパクト | ||
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2℃以下 シナリオ |
4℃シナリオ | 試算 | |||||
機会 | 移行 | エネルギー使用に関する政策規制 | ・再エネ政策の強化により、水素やバイオマス、太陽光発電などの研究開発や、製造、使用に資する自社製品の需要が拡大
・自社の低消費電力機能設計の製品に対する需要が拡大 ・省エネ政策の強化により、製造現場等の施設での温度やエネルギー使用状況を監視、制御する自社機器、システムなどの製品の需要が拡大 |
短期〜長期 | 大 | - | - |
再エネ・省エネ技術の普及 | 太陽光発電やバイオマス発電、水素などの再エネ・省エネ技術の普及と活用により、関連需要に応える 自社製品の売上が増加 | 中期〜長期 | 大 | 大 | - | ||
低炭素技術の進展 | ・EVへシフトする中、電池の劣化を抑制し、効率を向上させる冷却技術が柱となるため、自社の温度計測機器や、制御機器の需要が拡大 ・軽量化素材を含む低炭素技術の進展に伴い、関連する自社の成分計などの製品の需要が拡大 |
中期~長期 | 大 | - | - | ||
顧客行動変化 | ・省エネ効果のある製品の需要が拡大 ・顧客のエネルギー利用効率を管理、向上させる製品や水素等の新エネルギーの使用に関連する製品 の需要が拡大 |
短期〜長期 | 大 | - | - | ||
レピュテーション変化による影響 | ・気候変動対策、情報開示が高い評価を得た場合、企業価値が向上し、新規顧客の獲得機会が拡大する。 ・気候変動対策を積極的に行った場合、ESG投資の対象となり、資金調達コストが低下する |
短期〜長期 | 中 | - | - | ||
物理 | 平均気温の上昇 | 気象パターンの変化に適応できるハウス農業の発展により、室内の温度・湿度管理製品の需要が拡大 | 中期〜長期 | 小 | 小 | - |
【時間軸】 短期:0〜3年 中期:4〜10年 長期:11年〜
上記で特定したリスク・機会による財務影響度を大・中・小の三段階で定性的に評価したうえで、現時点で試算可能なリスク・機会項目について、外部パラメータと当社実績値を元に2030年及び2050年時点の2℃以下シナリオと4℃シナリオにおける財務インパクトの試算を行いました。
前提条件 | 試算項目 | 試算結果 (単位:億円/年) |
---|---|---|
2030年時点の1.5℃シナリオにおいて、カーボンプライシングの導入により、 当社のエネルギー使用による温室効果ガス(GHG)排出に応じた操業コストの増加を想定。 |
・エネルギー使用のコスト増加 ※炭素税の課税対象(Scope1+Scope2)×炭素税 ※参照:IEA WEO 2023 2030,1.5℃…140USD/t-CO2 22050,1.5℃…250USD/t-CO2 ※Scope1+2目標=2030,190t-CO2、2050,0t-CO2 ※USD/JPY 147.53(2024/3/13TTM) |
2030:3.92 2050:0.00 |
2030年及び2040年時点の1.5℃シナリオにおいて、 脱炭素化が進むことに伴い、再生エネルギーの価格が上昇。 電力消費に応じた操業コストの増加を想定。 |
・電力調達のコスト増加 ※参照:IEA WEO 2019 (WEO2020-2022で報告なし) 2030,1.5℃…+15USD/MWh 2040,1.5℃…+16USD/MWh ※電力使用:5320.2MWh/年 ※USD/JPY 147.53(2024/3/13TTM) |
2030:11.77 2040:12.56 |
当社環境方針に沿って、上記リスク・機会への対応策を4つのカテゴリに区分し、各取り組みの方向性を検討し、全社的に進めていきます。
「GHG排出量削減」について、当社は国内主要拠点の購入電力を再生可能エネルギーに切り替えました。併せて事業所や生産拠点設備の省エネルギー対応を進めるとともに、電力以外のエネルギー使用量の削減や廃棄物の最終処分量の削減などの「資源の有効活用」に関わる活動も推進してカーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させています。
また、経済産業省の「水素基本戦略」に掲げられた目標の実現に向け、当社は「環境イノベーションの促進」を環境方針の1つとして位置づけ、水素を含む再生可能エネルギーの活用領域で30年以上にわたり培ってきた技術で脱炭素社会の実現に貢献し続けていきます。
さらに、物理的なレジリエンス性を保つため、当社は災害発生時に備えたBCP策定の高度化や、定期的な訓練の実施、グローバル調達体制の構築などを実施し、気候変動による被害や影響の極小化と早期復旧に努めています。
当社グループでは、リスク管理の統轄機関として「リスクマネジメント委員会」を設置し、毎年一定のサイクルで定期的に開催しています。「リスクマネジメント委員会」は、代表取締役社長を委員長として、リスク対応方針の策定や環境課題を含めた全社経営リスクの継続的な識別と評価を行い、優先順位をつけて絞り込んだ重要リスクへの対策を決定するとともにその進捗状況をモニタリングしております。
上記重要リスクのうち気候変動に関連したリスクについては、その時間軸や規模の特殊性を踏まえて「サステナビリティ推進会議」の中でより詳細に検討を行っています。「サステナビリティ推進会議」では、複数のシナリオを用いて、気候変動に関連したリスクによる財務影響度及び将来的な事業のレジリエンス性を定性と定量の両面から分析、評価した上で、対策と実行計画を検討・推進しています。その進捗状況を「リスクマネジメント委員会」と共有の上、最終的に取締役会へ報告しています。
その他にも、リスクマネジメントが適切に行われるように、「サステナビリティ推進会議」では、グループ全体における気候変動に関連するリスクの特定、評価、見直しを定期的に行い、「リスクマネジメント委員会」に共有しています。
当社では、Scope1,2 (当社の事業活動におけるGHG排出量)について 「2026年度のGHG排出量実質ゼロ」「2040年度のGHG排出量完全ゼロ」という中長期目標を設定し、 目標達成に向けて各種の取組みを進めてまいります。
今後は、連結子会社を含めたグループ全体の指標及び目標の策定、 Scope3 (当社の事業活動に関連するサプライチェーン全体を含めたGHG排出量)の データ収集及び削減対策の検討等に精力的に取り組んでまいります。
~2022年度 | ~2026年度 | ~2030年度 | ~2040年度 | |
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目標 |
◆指標:GHG(温室効果ガス)排出量 (Scope1,2) ◆対象範囲:チノー単体 ◆基準年:2020年度(2020年度排出実績:[Scope1:261t-CO2] [Scope2:2,449t-CO2]) |
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Scope1,2のGHG排出量実質0へ (一部カーボンオフセット利用) |
カーボンニュートラル" Scope1,2のGHG排出量完全ゼロへ | |||
Scope1,2排出量 70%削減(2020年度比) | Scope1,2排出量 90%削減(2020年度比) | Scope1,2排出量 93%削減(2020年度比) | Scope1,2排出量 100%削減(2020年度比) | |
具体的取り組み | ◆ 事業活動における購入電力を、再生可能エネルギーに転換 | |||
電力調達を順次 再生エネルギー化 ・2021年10月 山形事業所 ・2021年11月 本社 ・2021年11月 久喜事業所 ・2022年7月 藤岡事業所 |
・当社の電力調達を100%再生可能エネルギー化 |
・国内グループ会社の電力調達を 100%再生可能エネルギー化 |
・Scope1,2すべてを再生可能エネルギーにより調達 | |
◆ Scope3(サプライチェーン排出量)の集計と目標設定および、排出削減 | ||||
◆省エネの推進、生産設備のエネルギー効率向上 | ||||
◆当社事業拠点に太陽光発電所の設置(山形事業所-2013年システム容量732kWh、藤岡事業所-2014年システム容量40kWh) |
対象範囲の詳細:(日本)本社、支店・営業所、国内主要生産拠点(藤岡事業所、久喜事業所、山形事業所)
2020年度(基準年) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2026年度(目標値) | |
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Scope1(主にガソリン、LPG等の燃料使用) | 261 | 266 | 265 | 260 | Scope1,2 271 |
Scope2(主に購入した電力) | 2,449 | 1,621 | 196 | 31 | |
Scope1,2 | 2,710 | 1,887 | 461 | 290 | |
基準年よりの削減率 | - | 30.4% | 83.0%(2022年度目標達成済み) | 89.3% | 90.0% |
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